お釈迦さまのお言葉に、「水をくみ出したならば、舟は軽やかに進むであろう」というものがあります。たとえば、遊園地の池に浮かんでいるような手こぎの小舟があるとします。この舟の中に水が一杯たまっていると、重くて漕いでもなかなか進んでくれませんが、水をきれいにくみ出してしまうと軽やかに進むことができます。
それと同じように、私たちの心の中が水びたしになっていると冷たく重苦しくて仕方がないが、水をくみ出してしまえば軽やかにのびのびと生きていくことができる。
心の中に何もないのが心のいちばん理想的な状態だからであり、
何もない心のことを「無心」といいます。
この心の中にたまった水のことを、仏教では煩悩(ぼんのう)と呼んでいます。
人間には百八ツの煩悩があると言われ、除夜の鐘を百八ツつくのはこの煩悩を退治するためだといいます。
しかし鐘をついたぐらいでは、なかなか煩悩は退治できるものではありません。