人生の道はいつも平坦とは限らない。
山道もあれば谷道もある。 右か左かとるべき道の選択に迷うこともある。 けれども、人はそのようにさまざまな道を歩み、時に迷い、時に悩む経験を重ねてこそ、人生の生きた知恵が身について強くも逞しくもなれる。
先人の教えに、「道に迷えば道を憶える」とあるが、これは実際の道路ばかりでなく、お互いの人生航路にもそのままあてはまるのではなかろう か。 とするならば、お互いの人生にとって望ましいのは、平坦な道ばかりが続くことではない。
むしろ起伏多い険しい道にしばしば出会って、これをしっかり乗り越えていくことだとも言えるだろう。
思いがけない難路が続けば、ついつい音を上げたくなるのが人情である。 しかし、そこで負けずに頑張り通して、これを克服することに成功すれば、 その経験はみずからの成長のかけがえのない糧ともなり、人生のより深く豊かな味わいともなる。
厳しい世相の中で、それぞれの前途に険しい道が増えてきている。 お互い に苦労歓迎 「禍を福に転ずる」 の発想法をもって、みずからを励ましつつ、積極的にこれに対処したい。
もし愚者にして愚なりと知らば賢者なり
愚者にして賢者と思う物こそ愚か者なり
(『法句経』六三)