こんな話がインドにあります。
九十九頭の牛を所有する金持ちがいました。彼はあと一頭の牛を手に入れると、ちょうどきりのいい百頭になると考えました。 そこで、その一頭の牛を手に入れるために、わざと貧しい身なりをして昔の友人を訪ねて行きました。 友人は一頭の牛を持って、細々とやっています。 金持ちは涙を流しながらこう言いました。
「わたしには何もない。明日、食べる物さえない。どうかわたしを助けてくれ」
友人はこう言いました。
「きみがそんなに困っているとは知らなかった。申し訳ないことをした。自分であれば、この牛がなくてもなんとかやれるから、この牛をきみに布施しよう」
金持ちは感謝の涙(もちろん嘘の涙です)を流しながら、牛を連れて帰って行きます。心のなかでは、こんなことを考えていました。(しめしめ、これで念願の百頭になったぞ)
さて、この金持ちと布施をした男と、どちらが幸福でしょうか?
答えは明白です。布施をした男はずっと幸福でいられます。でも九十九頭の牛を百頭にした男の幸福はたった一晩のものです。一晩たって翌朝になればきっと彼はこう考えるにちがいありません。(よかった。ようやく百頭になった。 この次は目標百五十頭にしてがんばるぞ!)
そうすると、そのとたんに彼が持っている百頭の牛は、たちまちマイナス五十頭になります。そして彼は、そのマイナス五十頭をマイナス四十頭にしマイナス二十頭にするために、あくせくし、イライラし、ガツガツせねばなりません。
それは決して幸福ではありません。足りない、不足していると彼は考えているのですから満足感もなければ、感謝の気持ちもありません。はっきり言って彼は不幸です。 わたしは、このような考え方を【マイナス思考】 と名づけています。牛を九十九頭も持っていながら、一頭足りないと考えた 者は、百頭になってもマイナス五十頭と考えます。
高校を出ているのに高校を卒業したという自覚がもてずに大学に入れなかったと考えるのが「マイナス思考」です。 課長にまでなれたと考えればい いのに部長になれなかったと考えるのが「マイナス思考」です。